バスの中はスリランカの縮図


スリランカのコロンボ周辺を走るバスはジェットコースターのようにボンボン跳ねます。観光できた場合は、主な乗り物はスリーウィラーというタクシーですが、バスは現地で生活するには欠かせない乗り物です。なんとか乗るしかありません。乗ると、そのスピードにも運転の荒さに驚きます。どうしても日本のバスとくらべてしまいます。扉も開け放されていて、運賃徴収は機械ではなくコンダクターです。ジェットコースターのように(またはトトロの猫バス)走る車内ではコンダクターが、ラッシュ時でどんなに混み合っているときでも人と人の間を押しのけ、前と後ろの扉の外に降りて乗ったりしながらも、運賃を五本の指にお札を種類ごとに分け、手作業で徴収します。
 バスのメーカーはインドのTATAやダイムラークライスラーのベンツが印象的です。その大きなバスの運転席には花の飾りや電光板を使った仏陀の絵などがアレンジされています。その一方で、ラジオやヒンディー、スリランカの流行音楽がバスの中に響きます。一番前の右側のインドのガネーシャ(象の姿の神様)などのポスターの貼ってある席は、お坊さんのためにあけているため人々はすわりません。そして、一番前の左側の席は妊婦や体の不自由な人たちのためにあけられています。ほとんどのバスには何もそのような表示はありませんが、暗黙の了解なのです。バスの中の通路は時に舞台となります。突然、乗ってきた芸人が太鼓を叩いて歌を歌ったり、物乞いが自分の不幸な境遇をかたったり、障害者の手製品を売ったり、下半身のない人が両手を使って乗ってきたりします。そんな人々が乗ってくると、運転手やコンダクターは大きな音でかけていたラジオや音楽もとめ、好きなようにさせます。自分たちの披露が終わると、バスに乗っている人々(観客)からお金を集めるのです。
 朝や夕方の通勤ラッシュ時には、運良く座れた人々が、立っている人の荷物をもってあげます。これも暗黙の了解なのです。日本では、そのように何もいわずに他人のものを持ってあげることは珍しいことだと感じます。また、(バスの中だけではありませんが、)アレンジしてある仏陀の電光板には、仏教が現代に深く生き続けていることを思わせますし、芸人や不遇な人々への哀れみを素直にお金であらわしたり、他人同士でも荷物を持ち合ったりするバスの中はスリランカの縮図のようなのです。